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2010年9月25日 (土)

国立能楽堂「鸚鵡小町」

おととい、国立能楽堂で「鸚鵡小町」を見て来ました。「すし屋」の維盛のセリフに出てくるでしょう。ずっと気になっていたんですね。維盛をお勤めになる俳優さんは、当然「鸚鵡小町」をご存じだと思いますが、観客としても、もう何年も歌舞伎を見ているのだし、ちょっとステップアップしてみようか…なんて。

あまり上演されない演目なんです。国立能楽堂の主催公演では初上演だそうです。

能は何度か見たことがありますが、正直言って、あまり感動したことがありませんでした。しかし、この度の「鸚鵡小町」には、大変強く深く感動いたしました。

能でも文楽でも歌舞伎でも、1度見ただけで「つまらなかったから、もう見ない」とか言わないでほしいんですね。映画だってテレビ番組だって、面白いものと詰まらないものがあるでしょう。個人的な好き嫌いもありますから。

「鸚鵡小町」には、小野小町が登場するんですよね。「あの小野小町が、実はまだ生きていて、あなたの目の前にやって来る!」という話なんです。「小野小町に会ってみたい」と思っている人のための演目。会いたいと思っていない人には、全然面白くないと思う。能って、バレエみたいに回るわけではないし、シルク・ドゥ・ソレイユみたいに跳ねるわけじゃないし、橋掛かりをヨロヨロ歩いてくるだけで何分もかかって、外国人には分からないんじゃないかと思いますよ。フランス人には分かるんですか?ドナルド・キーン氏は、下手な日本人より日本の古典に通じている人ですから、例外なんじゃないでしょうか。日本文化には素晴らしいものがたくさんありますが、和歌もその1つ。小野小町の歌は、学校で必ず習うでしょう。「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせしまに」…掛詞を教えるときの代表作ですよね。その小町が、業平の舞を舞うわけです。折句の代表作「唐衣着つつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ」を詠んだ業平です。こんなすごい設定ってあるのでしょうか。2人は歌のライバルでしょう。「起きもせず寝もせで夜を明かしては春の物とてながめ暮らしつ(業平)」…つまり「ながめ」の掛詞で張り合った間柄でしょう。私はあまりの美しさに涙が出ました。「和光の光、玉津島」ああ、なんて美しいんだろうねえ。その瞬間、日本文化の頂点が垣間見えたのですよ。

こういう作品は、「業平の舞の袖、思ひ廻らすしのぶ摺」という詞章のところで、パッと「しのぶの乱れ限り知られず」などの古歌が思い浮かばないと、面白くないと思うのですね。

もう少し、能を見る機会を増やそうかと思う今日この頃。

備忘録
「妙なる花の色好み」は「いろごのみ」ではなく「いろ・このみ」であった。
「菊慈童」「舟ふな」も良かった。狂言を、初めて面白いと思った。

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