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2010年10月14日 (木)

日生劇場「カエサル」あれこれ

●幸四郎さんは、シェイクスピア四大悲劇の主役を全て演じたことがあるそうです。すごいですねえ。4役完演した俳優って、世界に何人くらいいるものなのでしょう。日本ですと、平幹二朗さんも演じていますね。他にもいらっしゃるのでしょうか。

●幸四郎さんは、役作りのため、6月にローマを訪れたそうです。その際に、原作者の塩野七生さんに、3時間以上にわたってローマ文明博物館を案内してもらったとのことです。すごい。ローマに行って、塩野七生に案内してもらう、こんな贅沢な旅行があるだろうか(いやない)。他の人がお金を出して頼んだとしても実現しないと思う。あの幸四郎がカエサルを演じるので、特別にあの塩野七生が時間を割くわけですよ。こういうのを役得と言うのじゃないだろうか。役得、それは何と素敵な言葉なのでしょう。

●話が飛びますけれども、私が思いますには、天皇制の1番の特色は、「何でも教えてもらえる」ということなのではないでしょうか。たとえば外国に行くときには、その国の歴史、地理、文化、経済、産業、気候、言葉、あらゆることを事前に説明されるわけでしょう。芝居を観劇されるときには、脚本のこと、作者のこと、俳優のこと、音楽のこと、全て説明されます。その道の第一人者が、持てる力の全てを注いで説明するわけです。会いたい人には誰でも会えて、聞きたいことは何でも聞ける。それは、制度としてそうなっているもので、他の人が望んでも叶わぬことです。小さな子どもって、よく「どうして?」「なんで?」と親に質問するでしょう。最初のうちは答えられるけれど、いつか答えられなくなる時期がやってくる。「テレビって、どうして映るの?」「さあ…?」そこで子どももストップですよ。子どものレベルは親のレベル。天皇陛下にはストップがないわけです。何でもご存じなのでしょう。(それはそれで大変でしょうけれど…。)

●プログラムを購入したら、原作者の塩野七生さんと、クレオパトラ役の小島聖さんが、正反対のことを言っていて面白かった。

塩野七生 日本には人間国宝というものがありますが、カエサルは、たとえて言うなら“人類の世界遺産”なんですよ。歴史上の、主役中の主役です。幸四郎さんもこれまでずっと主役をやってこられたんですよね。ゲーテもこう言っています。「ローマの歴史を読むときは、ローマの皇帝になったつもりで読まないといけない」と。私は歴史上の人物を描くとき、自分に引きつけるようなことは絶対にしませんでしたよ。よく言いますでしょう、「英雄も、召使いの目から見ればただの人」だと。身近のことなら、召使いはよく知っているかも知れない。でもその英雄の、真に英雄らしいスゴさを見透せる力は、ただの人でしかない召使いにあるでしょうか。これまでの歴史上の人物を扱う見方が、あまりにも召使いの目から見たものが多すぎるような気がするのです。

小島聖 私は、外国の話や時代ものをやるときは、自分の身近なものに置き換えて捉えるようにしてるんです。今回だと、例えば「カエサル」を日本の総理大臣や、身近な英雄に置き換えてみる。そうすると、時代が違ったり、国籍が違う物語を生きなくてはならなくても距離が縮まって、「そうか、人間を演じればいいんだ」っていう基本に立ち返ることができるんです。

「カエサル」を「日本の総理大臣」に置き換えるのって、ずいぶんなスケールダウンじゃないですか。「カエサル」と「日本の総理大臣」って、同じなのでしょうか。人間は、自分の知っている範囲でしか物事を捉えられない、ということでしょうか。知っている範囲が狭い人は、どうするのでしょうか。なぜカエサルそのものを捉えようとしないのでしょうか。小島聖さんの「自分の身近なものに置き換えて捉えるようにしてる」という考え方は、近年のオペラの演出でもよく見かけますが、なぜ置き換えないと理解できないのか、私にはよく分からない。私は、老若男女あらゆる階層に感情移入できますよ。《ラ・ボエーム》を見たらミミのために泣きロドルフォのために泣き、「沼津」を見たら平作のために泣き十兵衛のために泣きお米のために泣きますよ。《トゥーランドット》を見たときは泣かないけれど、トゥーランドットもカラフもリューも素敵だなと思います。スペインの女王にも感情移入できるし、喘息の爺さんにも感情移入できます。なぜ他のものに置き換えなければいけないのか、よく分からない。…それで、小島聖さんは、クレオパトラを何に置き換えて役作りをしたのでしょうか?自分とか?

●(歌舞伎を見るときは、「引っ張りの見得のとき頂点に立っている役」の視点で物語を見ないといけないと思います。そうしないと、全ての役の旨味を味わえないからです。)

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