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2015年6月 7日 (日)

雨のアレーナ

私は去年の7月、イタリア北部の町ヴェローナに行ってきたのです。
前から1度、アレーナ・ディ・ヴェローナの野外オペラを見てみたいと思っていたのですが、ちょうどミラノのスカラ座で見たい公演があったので、ついでにヴェローナまで足を延ばしました。(ミラノ・ヴェローナ間は電車で1時間半くらい)

最寄り駅からは徒歩で。ホテルはアレーナのすぐ近くでした。
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町の入口に門が

ヴェローナは小さな町なので、観光は1日ですんでしまいます。
一番有名な観光スポットは、ジュリエッタの生家。シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」で知られるジュリエット。イタリア語だとジュリエッタ。

ジュリエッタの像は、右の胸だけ金色に光っている。みんなが触るから。何のご利益があるのか知りませんが、私も触ってきました。
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お前の鞘は私の胸

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ロメオが愛を囁いたバルコニー

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でも菊五郎劇団の若手でも登れない思う

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今は美術館となっているお城や、美しい教会もありました。
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↓そしてこれがアレーナ・ディ・ヴェローナ
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ヴェローナでは3つのオペラを見たのですが、そのうちの2つが雨のため途中で中止となってしまいました。

7月8日《アイーダ》 雨のため第2幕までで中止

7月9日《トゥーランドット》 雨のため第2幕の終盤で中止

7月10日《カルメン》 無事に全幕上演


昼間はすごく晴れていたのに、夕方から急に雨になり、夜になって一時的に天候回復。→予定時間どおり開演したものの、途中で小雨が降り出し、中断。→再開を待つ。→再開されぬまま、夜中の12時近くに終了のアナウンス。

日本の夕立のような感じで、昼間の気温上昇により地上の湿気が上空に昇り、夕方の気温低下で急な雨、という印象でした。

ヴェローナでオペラを見たという人の話を聞くと、たいてい雨で中止という経験談が出てくるので、かなりの確率で雨が降るのかもしれません。
でも、私の隣の席に座ったおばさまは「私は10年ここに通っているけれど、こんな経験は初めてだわ」と英語で言っていたので(私の聞き違いでなければ)、よく分からない。
野外オペラに適した時期だから開催しているのは間違いないのでしょうけれど。

行ったら客席がガラガラで驚きました。
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どこも不景気なのね・・・と思ったのですが、開演前から雨の心配がなかった《カルメン》は、ほぼ満席!
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これは、あれですね。夕方に雨が降ると、もう諦めて来ない客がたくさんいるわけなんですね。たしかに椅子は濡れているし、中断するかもしれないと思いながら見ているのも心配ですし。
でも、持っているチケットはどうするのだろう。諦めるのでしょうか?払い戻しはしてくれないと思うけれど、団体客などは別扱いなのでしょうかねえ?

《アイーダ》は、第2幕終了後の休憩中に雨が降り出し、再開されぬまま中止となったのですが、《トゥーランドット》は第2幕の上演中に突然音楽がストップしました。
「いいえ姫、私は愛に燃えるあなたが欲しいのです!」とカラフが歌ったところで演奏中止。(ちなみにカラフは低いほうのアルデンテ・ダモールで歌っていた高くあげろやゴルア)
私は前から5列目くらいの中央席という極上のポジションで見ていたのですが、演奏をストップさせる合図が全然分からなくて、あまりの唐突さに驚きました。大勢の演奏者が一斉に音楽を中断。まさか止まると思っていなかったので、一瞬、何が起こったのか分かりませんでした。あれよあれよとオーケストラ団員が引っ込んでいきます。あと少しで第2幕が終了するのだから、やってくれればいいのに!降っているかどうかもハッキリ分からない程度の小雨なのに!!
楽器は濡らすと駄目になってしまうので、ほんの少しの雨でも中断するらしい。
トゥーランドットとカラフは、客席にお辞儀をして去って行ったのですが、「演奏が中断されて悔しい」という素振りは少しも見せず、妙に嬉しそうでニコニコだった・・・。

せめて「誰も寝てはならぬ」くらい、アカペラで歌ってくれたら良かったのに。

いっそ大雨だったら私も諦めがつくのだけれど、《アイーダ》の時も《トゥーランドット》の時も、小雨が降ったり止んだりのような天気。ジリジリと再開を待ち続けます。
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《アイーダ》は、舞台から遠いスタンド席で。
《トゥーランドット》と《カルメン》は前から5列目くらいの最上の席で拝見。
客層が全然違いました。

スタンド席は、普段はオペラを見なさそうな観光客が多い。
ワインボトルを持ち込んで、お酒を飲みながら見ている人もいました。客席がずっと落ち着かない感じで、野球観戦みたいなノリ。私の隣の陽気なおじさんは、上演中も隣の奥さん(?)と話をしたり、指揮の真似をしたり、子供っぽい感じでしたね。
私は神経が細い人間なので、本来ならばそのような雑然とした雰囲気は好まないのですが、何と言いますか、ギリシャ悲劇を観劇するギリシャの市民ってこんな感じだったのかなあと思って、逆に興奮してしまいました。オペラって、ギリシャ悲劇の復元という側面がありますでしょう。スタンド席の雑然とした雰囲気が、古代へと繋がっている感じ。フフフ。

前のほうの席は、着飾っている人が多かったですね。観光客、特にドイツからの客が多いようでしたけど。

雨で中断されると、あっさり諦めて帰っていく人がとても多かった。
私は1%でも再開の可能性があれば絶対に帰らないけれど、それほどオペラに執着がない人が多いようでした。イベントとして楽しんでいるのですね。
雨で中断された場合、満席の客が再開を待って熱気に満ちている様子をイメージしていたので、ゾロゾロ帰っていく人々を眺めているのは寂しい感じでした。

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人々がみんな立ち去っても私ここにいるわ 「ノーサイド」

《アイーダ》の時に私の隣に座っていたおじさんは、大声で「雨に唄えば」I'm singing in the rainを唄い、踊り、周りの客から拍手をもらいながら去って行った。
そのおじさんは、おそらくドイツ人でしたが、英語で周りの人々に話しかけ、私にも話しかけてきました。スタンド席では両隣から英語で話しかけられ、英語は話せるに決まっているだろうというスタンス。
でも前方席では話しかけてくる人はいなかった。

アレーナ・ディ・ヴェローナと言えば、開演前にみんなでキャンドルを灯すのが名物だったのですが、ちょうど私が行った日から、やらなくなりました。
きっと、ライターを持っている人が激減して、火を灯せなくなったのではないでしょうか。

行く前のアレーナ・ディ・ヴェローナのイメージは、夏だけの寄せ集めの出演者で、上演のレベルはそれほど高くないと思っていました。ところが、実際は非常に質の高い上演で、たいへん満足しました。

歌手の声は、スタンド席までガンガン届きます。スピーカーで拡声していたのかもしれませんが、全く不自然なところがなく、優れた音響です。
ただし、オーケストラの音は、前に飛んでこなくて、ちょっと弱々しいものでした。前から5列目でさえも弱々しく感じました。
ソリストは世界の一流の歌手が呼ばれています。

私はフランコ・ゼッフィレッリのファンです。ニューヨークのメトロポリタン歌劇場からゼッフィレッリの演出作品が次々と消えていく中、今やヴェローナがゼッフィレッリ演出の聖地。ヴェローナは観客の数が多いので、演出にお金をかけられるのですね。
私はメトでもゼッフィレッリの《トゥーランドット》と《カルメン》を見たことがありますが、ヴェローナはまた少し違った演出でした。
ヴェローナの《トゥーランドット》は、セットが金色でキンキラキンです。メトの《トゥーランドット》は、ゴージャスな中にも、もう少し渋みのある色づかいでした。トゥーランドットの衣裳も、メトのは淡い水色ですが、ヴェローナは青が濃くなっていました。ヴェローナは会場が広いぶん、全体的に味付けが濃くなっているように思いました。ダンサーの踊りも、振付が派手めになっていたようです。
メトの舞台は縦長で、ヴェローナは横長なので、ヴェローナでは舞台の脇のほうが寂しくならないように工夫していたみたいですね。

《トゥーランドット》に関して言えば、同じゼッフィレッリ演出であっても、メトのほうが圧倒的に私の好みです。照明や背景幕はメトが断然優れている。
しかし《カルメン》は、メトよりヴェローナのほうが興奮しました。ヴェローナの《カルメン》はすごい。
舞台美術はやはりメトのほうが優れていると思うのですが、ヴェローナはダンサーの人数が多くて、大迫力なんです。芝居の本筋と関係なくずっと踊ってる人が舞台の脇のほうにいたりして。
第4幕のエスカミーリョ登場のシーンでは、馬が何頭も出てきて、メトでも馬は出てくるんですけれども、ヴェローナの馬は音楽に合わせて踊るんです!!
白い馬が1頭、下手〔しもて〕で踊る踊る!!どうなってるの?私は踊る馬を初めて見た。
ヴェローナはとにかく舞台が広いから大勢で踊るとすごい。合唱の声の迫力もすごい。《カルメン》第4幕が大盛り上がりで鼻血が出そうなくらい興奮しました。雨で中断した2演目の残念さを忘れさせるほどに。

アレーナ・ディ・ヴェローナは、雨が心配ですが、ぜひまた行きたいですね。



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開演前の銅鑼

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雨のために閉まっていくトゥーランドットの宮殿

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閉まらないで・・・

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月が美しい

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コメント

オペラ関係NHK放送の情報です。シリーズ放送「ライバルたちが時代をつくる」の第3弾として6月11(木)深夜0時00分からBS1チャンネルテレビで「マリア・カラスvsレナータ・ティバルディ」が放映される模様です。最近レナータさんに凝っており、ティバルディ全集(DECCA版)全66CDを順に聴いていて、「あ~あ、あと40年いやせめて20年早く生まれていたらナー」などとため息をついたりしています。(生で聴いたことがないのです)再放送もある様ですから、オペラファン必見でーす。


ウチはBSが入らないのですが、気になる番組ですね。

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