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2018年6月12日 (火)

東敦子の蝶々夫人

東敦子(あずま・あつこ)さんが1973年に東京文化会館で演じた蝶々夫人の映像を見ました。奇跡的に発見された映像だそうで、昨年末にDVD化されたものです。
「世界一の蝶々さん」という触れ込みだったのですが、まあ宣伝文句に違わぬ見事な蝶々さんでした。振袖の袂の扱い、お引きずりの裾さばき、扇や煙管の扱い、これだけの演技ができる日本人ソプラノはもう存在しない。
私がオペラを見始めて20年、日本人ソプラノが歌う蝶々さんも何回か見ましたが、年を経るにつれてどんどん演技が下手になっています。特に、歩き方や、こわばった指先の形が不自然。下手さの形式が誰も似ていると思う。同じ人から教わるからなのでしょうか?外国人の演技とさして変わらない感じです。日本人ソプラノの下手な蝶々さんを見ていると「日本人のくせに」と思ってしまうので、むしろ外国人の蝶々さんのほうが良いと思うこともあります。

八千草薫さんの演じる素晴らしい蝶々夫人の映画も見たことがありますが(声は別の歌手のもの)、あれは映画的な演技でした。東さんの演技はもっと誇張された舞台用の演技で、前もって計算され尽した名人芸という印象でした。愛の勝利を叫んで泣くところなんて、まるで新派みたい。こんな演技ができるソプラノがかつて存在したんだなあと新鮮でした。
現在の日本文化の土壌を考えると、もう今後このような蝶々さんが現れることはないでしょう。ある特殊な時代に一時的に現れて永遠に失われた伝説の蝶々さん。

でも蝶々さんの衣裳は私の好みではなかった。これまで蝶々模様の打掛が美しかった試しがない。
歌舞伎の衣裳でも、白玉の俎板帯の蝶々は全然綺麗と思わない。でも八ツ橋の蝶々は綺麗。五郎の蝶々もいいなと思う。蝶々の着物は難しいんですね。
第2幕の蝶々さんは、どうしてみんな濃い紫の着物を着るのだろう?まだ18才のはずなのに、おばさんっぽくなりません?

脇役の歌唱がかなり低水準な感じでした。昔の日本のオペラ公演はこんなだったんですかね・・・。

東さんは、目がキョロキョロする点だけちょっと気になりますね・・・。

奇跡的に発見された映像ということなのですが、これだけの映像がなぜ眠っていたのか、そしてなぜ発見されたのか、興味深いところです。

国立劇場の倉庫は、何がどこに保存されているのか誰にも分からない、まさに死蔵。新国立劇場ができて国立劇場の予算が大幅に削られる時、真っ先に削られたのが調査養成部門の事業でした。

早稲田大学の演劇博物館は、自らの所蔵作品をインターネットで検索できるようにデータベース化し、活用されていて素晴らしいと思います。

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