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2018年8月10日 (金)

母国語志向

わたくし、今年の3月まで、国立劇場で公演プログラムの編集の仕事をしていたのですが、4月の人事異動で別の部署に配属となりました。
編集の仕事は自分で望んだものではありましたが、あまりに仕事量が多いのと、他人が書いた原稿を気に入らず内容を大幅に変更させようとする人が多いので、イヤになってしまいました。

そうして4月から別の部署に来たのですが、残業が少ないので、良かったですね~。校正の仕事はやってもやってもきりがない感じでしたからね~。もう献身ですよ献身。

そして今は何をしているのかというと、あんまり説明できないような仕事です。
劇場の仕事には、芝居を面白くするための仕事と、そうではないけれど必要な仕事と、大きく分けて2種類の仕事があり、今わたくしは後者に属しているわけなんです。
国立劇場では、後者の仕事が年々拡大していって、書類ばかり作っている部署とか、検査ばかりしている部署などが、少しずつ新設されていきます。

現在の私の仕事は、新国立劇場と、国立劇場おきなわを管理する仕事です。
日本には国立の劇場が6つ存在するのですが、そのうちの2つはウチから業務委託されている財団が運営しています。
なぜ委託をしているのかと言うと、組織をこれ以上大きくするわけにいかなかったからです。国立劇場を運営しているのは独立行政法人なのですが、独立行政法人は常に行政改革の矢面に立たされて、検査ばっかりしているんです。その手間で、芝居を面白くするための仕事をすればいいのにね。ホームページの公演情報なんて、ちらしのpdfを張り付けてお終いだもの。

その点、新国立劇場は財団法人なので、何の検査も受けておらず、のびのびと仕事が出来て、いいと思うんですよね~。

6つある国立の劇場のうち、4つは東京にあり、1つは大阪、1つは沖縄です。
沖縄は「芸能の宝庫」などと言われて、個性的な芝居、舞踊、音楽が今も継承されています。
このあいだ、初めて国立劇場おきなわに行ってきました。
開場して15年になる、一番新しい国立劇場であり、そして最後の国立劇場でしょう。
最寄り駅から車で15分くらいでしょうか。(あまりに遠い・・・)
劇場の内部に資料展示室があり、過去の公演記録映像が流れていました。それが全然聞き取れないんです。「ウチナーグチ」と言われる沖縄方言、琉球語のセリフなんですね。沖縄芝居には、戦後に作られた新しい題材の作品もたくさんあるのですが、昭和の作品でも全く聞き取れない。
芸術監督の嘉数道彦(かかず・みちひこ)さんにお会いする機会があったので質問させていただいたのですが、出演者さえも日常会話では使わない言葉なのだそうです。芝居の中で使われているようなウチナーグチを普通に喋れるのは今の80代くらいが最後の世代だと仰っていました。現在、沖縄芝居で新作が創作される時、作者がいったん現代語で書いて、別の人がそれをウチナーグチに翻訳するのだそうです。(歌詞など韻文を除く)
私は驚きました。だって見ている客が分からない言葉なのです。舞台脇の字幕で現代語の翻訳を表示しているんですよ。わざわざ分からない言葉に翻訳するなんて、なぜ現代の言葉で書かないのか驚いたのです。
しかし、ウチナーグチでなければ沖縄芝居ではなくなってしまうのだろうなあ、とも思ったのです。普通の芝居になってしまいますからね。

ここ数年、歌舞伎の新作で使われている言葉が変だなと思うことが増えました。前はそんなことはなかったのですが、もう書いている人も分からなくなっているんですね。
やっているほうも分からなくて、見ているほうも分からなくて、分からない同士で向かい合っているみたい。

沖縄の出演者は、ウチナーグチを理解したいから勉強している、と言っていました。

そう言えば最近、日本人作曲家による新作オペラがいくつか続けて上演されていますが、いったん作曲家本人が日本語で書いた台本を、別の人がドイツ語やら英語に翻訳しているという事例が見受けられます。実に不思議な現象ですね・・・。

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