3 オペラあれこれ

2019年2月18日 (月)

オペラ公演の男性率

新国立劇場で、日本製の新作オペラ《紫苑物語》が初演されました。
パラパラとプログラムをめくっていたら、スタッフの男性率がすごく高くて、ちょっと驚きました。歌手なら圧倒的にソプラノが多いはずなのに、オペラの世界って意外と男性社会なのかなと思いました。

2019年2月 5日 (火)

紅海で溺れるファラオ

先日、仕事で読んでいた書類に、堀内康雄さんの名前が載っていたのです。
ああ堀内さんはいい声だったなあ、好きだったなあ、最近はどうしているのかな?と思ってちょっと検索してみたところ、「
Web バリトン 堀内康雄」というサイトがありました。

その中の「フォトギャラリー」を見ていると、「営業マン時代」という写真が掲載されており、そうそう堀内さんってサラリーマンからオペラ歌手に転身されたんでしたね。

下のほうに「Questo Mar Rosso...」というタイトルで、堀内さんがマルチェッロを演じた時の写真が掲載されているのですが、油絵の前でポーズを取っている、その油絵がまさに「ファラオが紅海で溺れているところ」なんです。この小道具、たいてい絵が反対側を向いていて見えないのですが、こんなに精巧に描かれた小道具は珍しいですね。この公演のために誰かが描いたのでしょうか?すごい!こういう小道具を用意する情熱が最高ですね!

マルチェッロは、急に思いついたようにファラオを海に溺れさせるわけですが、もともと、どういう絵を描くつもりだったのでしょう?
改めて考えてみると、これは「出エジプト記」を描いた絵ですね。モーゼが割れた海を渡って脱出するスペクタクルな場面は、映画や舞台映像では見たことがありますが、油絵ではあまり見た記憶がありません。モチーフが壮大すぎるからでしょうか?それも「渡る前」「渡っている最中」の絵なら分かりますが、「モーゼが渡ったあとファラオが溺れるところ」を描こうと思いつくのは、やっぱり寒さの腹いせなのでしょうねえ。

堀内さんのマルチェッロの写真、かっこいいなあ。2006年、名古屋の公演みたいですね。

2018年11月28日 (水)

マントヴァ公の心付け

《トスカ》の第3幕で、カヴァラドッシが看守に指輪を渡すじゃないですか。トスカへ手紙を届けてくれる報酬として。指輪をそういうふうに使う場合がある、というのは子供の頃に聞いたことがあった気がしますが、いざという時にこの指輪に相当するものを身に着けているというのは重要なことだなあと思いました。

初めて《リゴレット》を見た時だったと思うのですが、乳母だか家政婦だか、ジョヴァンナにマントヴァ公がお金を渡す場面があったのです。ジルダと2人きりにしてもらう報酬として。私は「世の中に、そんな金の使い方があったのか」と大変驚きました。ジョヴァンナはリゴレットに雇われていて、さっきまでジルダを守ると何度も約束していたのに、それは口先だけで、いかにも好色そうな若者に手を貸してしまうのです。そうしないとドラマが進展しないので仕方のないことなのですが、本当に恐ろしいと思ったものでした。

2018年11月27日 (火)

リゴレット

今日はボローニャ歌劇場来日公演の先行発売日でした。

ちょっと《リゴレット》が続きますね。
・今月 金沢歌劇座
・来年4月 東京・春・音楽祭(演奏会形式・抜粋上演)
・来年6月 ボローニャ歌劇場来日公演
・再来年2月 藤原歌劇団

こうして《リゴレット》の公演を並べますと、劇場名だったり、団体名だったり、音楽祭だったりと、日本のオペラの興行形態は実にさまざまですね。

春祭の「抜粋上演」というのが謎ですね~。パンフレットに合唱が記載されていないので、合唱が出る部分がカットされるのでしょうか?予算の都合?

このブログでは再三書いていると思いますが、
1966年11月19日ライヴ録音 テアトロ・コムナーレ(フィレンツェ)
指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ
マントヴァ公爵:ルチアーノ・パヴァロッティ
リゴレット:コスタス・パスカリス
ジルダ:レナータ・スコット
レーベル:ARKADIA

この《リゴレット》の録音は本当に素晴らしいので、ぜひご一聴をおすすめいたします。もう信じられないくらいの名演です。

《リゴレット》という作品は、創作の過程で《呪い》というタイトルにすることが検討されていたそうです。モンテローネ伯爵は、マントヴァ公爵とリゴレットの2人に対して呪いをかけるのですが、マントヴァ公爵は平然としていて、リゴレットだけが呪いにかかってしまう。
それはなぜなのかと言うと、ジルダがマントヴァ公爵への呪いを防いだからですね。
呪いよりも、人間の行動のほうが強いんですね。
呪いと反対のその行動に名前が付いていないのはなぜなのでしょう?

呪われたら人間の運勢は急降下すると思うんですね。
でも、それを防ぐ手立てというものも、存在すると思うのです。
日本の「累〔かさね〕伝説」では、祐天上人〔ゆうてんしょうにん〕の祈祷によって怨霊の解脱ということが起こります。
あとは「陰徳を積む」というのも有効だと思います。「陽徳」でも構いませんが・・・。
「困っている人への寄付」「喜捨」なんていうのが、思いのほか力を持っているのではないでしょうか。つまり、逆の力を集めればいいわけですから。

2018年10月18日 (木)

中古

私はなんでこんなに狭い部屋に住んでいるのだろう、とよく思うのです。
まあ、新宿区に住んでいるので、仕方がないのかもしれません。
その前は小金井市に住んでいたのですが、東日本大震災の後、職場に少しでも近いところに住みたいという強い欲求が出て、新宿区にしてしまったのです。
部屋が狭すぎて、物をしまう空間がないため、物に埋もれています。

オペラのDVDを売りに出そうかと考えました。
中古CD屋はよく利用するのですが、買うほうばかりで、これまで売るという経験がありませんでした。
買うのは高いけれど、売るのはどうせ二束三文だから、もったいないと思ってずっと所持していました。
とりあえず、試しに1度売ってみようと思って、もう2度と見ないことが確実なDVDを2枚持って家を出ました。

ところが、新宿のディスクユニオンがビルごとなくなっていたのです!!
工事中の壁の貼り紙を見たら、隣の紀伊国屋書店の8階に移転したらしい。
行ってみたら、オペラのコーナーはかなり狭くなっていました。
クラシックのジャンルは、LPのスペースが大きくなっていて、CDは少ししかない感じ。
中古CDはAmazonで買う人が多いだろうけれど、LPは郵送に向いていないから、店舗に足を運んで買う人が多いのでしょうか。
LPは扱いづらいし、ノイズが入りやすいし、どこがいいのでしょうかねえ・・・。
(大きなお世話ですが)

オペラのDVDのコーナーはどこかな?と思ったら、DVDは別の店舗に移転したのだそうで、歩いて行ける近くの場所(大塚家具のそば)でしたが、ずいぶんと不便ですね・・・。
普通の映画のDVDなどと一緒に売られていて、オペラなんて全然存在感なし・・・。

結局、売らずに帰ってきてしまいました・・・。

2018年10月14日 (日)

魔笛

新国立劇場で、新制作の《魔笛》を見てきました。

私が《魔笛》を生で見るのは3度目でした。
最初に見たのは、新国立劇場で《魔笛》が初めて上演された時だったのではないかと思います。はっきり分からない。誰が何の役を歌っていたのか、全く記憶にないのです。記録を見ると、新国初演時の指揮は大野和士さんだったんですね。よっぽど《魔笛》がお好きなんですね。

私の記憶では、最初に見た時、ザラストロがモノスタトスに対して「お前の心は肌の色と同じで真っ黒だ」と言い放ち、私はその字幕に深い心の傷を受けました。なぜこのような作品が現代において上演されているのかと不思議に思いました。
まあしかし、手塚治虫の漫画でも、黒人を古いステレオタイプの絵柄で描いているものがあり、手塚治虫だって現代に生きていたらそのような描き方はしないだろうけれど、死んでしまって修正できないのだから仕方ないなとは思うのです。当時はそんなふうに捉えられていたんだなあと思いながら読めばいいのでしょう。

パパゲーナが最初に出て来た時はお婆さんのふりをしていて、途中で若い娘だと分かってパパゲーノが大喜び、というのは感じの悪い話だなとずっと思っておりました。

今回の上演では、セリフがカットされたのだか台本が整理されたのだか分かりませんが、そのような嫌な感じがだいぶ薄まっていました。(黒人差別のセリフはなかった)
でも女性蔑視の印象は変わらず残っていました。
モーツァルトの音楽が乗っている部分かどうかで、変更出来るところと出来ないところがあったのでしょうか・・・。

今はYou Tubeでアリアの聞き比べが気軽に出来るので、夜の女王のアリア「復讐の心は我が胸に燃え」をいろいろな歌手で聞いてみました。完全無欠であろうと思ったエディタ・グルベローヴァは、意外と歌い崩している感じがしました。私の印象では、楽譜の通り完璧に歌えているのはナタリー・デセイくらいではないかと思います。モーツァルトはなぜ誰も歌えないような前打音を入れたりしたのでしょう?
そして声の音色、役柄の威厳など、総合的に見て一番いいなと思ったのは、クリスティーナ・ドイテコムでした。
「誰が歌っても大して違わないアリア」だと思っていましたが、連続して聞き比べると、違うものですね。

2018年9月10日 (月)

残酷な人

マリア・カラスはたいへん個性的な歌手でしたから逸話も多く残されていますが、次の出来事はあまり知られていないのではないでしょうか。
カラスは1923年生まれ、1947年にヴェローナで《ラ・ジョコンダ》に出演してイタリア・デビューを果たしました。1950年にスカラ座にデビューし、1959年には絶対的な自信を持っていた高音(3点変ホ音)が出なくなります。1960~63年はあまり舞台に出演しませんでした。そして最後のオペラ出演が1965年です
これは、1961年にスカラ座で、ケルビーニ作曲《メデア》に出演したときの話です。冒頭、メデアは、心の離れていった夫ジャゾーネに向かって2回続けて「残酷な人!」と歌いかけます。指揮はトマス・シッパースでした。
 ↓
1961年12月11日の初日、第一幕のデュエットでメデアがジャゾーネに彼女と子供たちのところへ戻るように頼むとき、カラス伝説に寄与する出来事が起こった。シッパースは思い出す。「マリアが『あなたの子供たちの』と歌いだしたとき、聴衆は彼女の歌唱がうまくいっていないと感じたようでした。私は同意しませんが。天井桟敷からひどいシッシッと言う声が台風のように聞こえてきました。マリアは歌い続けて、遂にメデアがジャゾーネを『残酷な人!』という言葉で非難するテキストの地点に達しました。オーケストラはこの言葉に二つのフォルテの和音で従わなければならない。それから二度目の『残酷な人!』と歌う彼女を待ってオーケストラは演奏を続ける。しかし最初の『残酷な人!』の後、マリアはまったく歌うのを止めた。長いフェルマータ、サスペンスにみちた休止。私は疑惑でいっぱいになって見つめた。彼女は客席をねめつけ、劇場のあらゆる目を二つずつとらえ、あたかも“さあ、ご覧。これは私の舞台です。私が欲するかぎり私のもの。もし今、あなた方が私を憎むなら、私はあなた方を同じくらい憎みます”と言うかのようでした。私は見ていて、それを感じました。それからマリアは二度目の『残酷な人!』を直接、観客に向けて歌った。そして沈黙のなかにへこませたのでした。私の生涯でそんなことをあえて劇場でやる人なんて見たことがありません。決して。その後は彼女に対して抗議のつぶやきすらなかったのです。私はがたがたになりました。私自身は“ブウ”を言われたことがありますから、シッシッと言う声に気が転倒したわけではありませんでした。私を追い詰めたのはマリアの休止でした。彼女が再び歌い出したとき私はどうしていいかわかりませんでした。彼女が全部をコントロールしたのです。彼女が歌い出したとき、『私はあなたにすべてを捧げました』という言葉で、カラスは桟敷に彼女の握りこぶしを挙げて振りました」
『マリア・カラス-その人と芸術-』(主婦の友社)より

2018年9月 4日 (火)

オペラ公開稽古

先日、演出家の田尾下哲さんがオペラの一場面を演出するところを見学して来ました。モーツァルト作曲《フィガロの結婚》から、10分くらい(?)の場面でした。伯爵がスザンナを探しに来て、今宵2人きりで会おうと告げる場面です。

ホームページの事前のお知らせでは、公開稽古は15時から21時まで6時間となっていたのですが、実際は20時までの5時間で、だいたい1時間ごとに10分くらい休憩が入りました。どこで休憩が入るのか等、全体の構成が前もって分からないので、結構疲れました・・・。トイレはいつ行けばいいんだろうとか、飲食はどうなんだろうとか。パイプ椅子に5時間座っていて、隣の人の肩が当たるくらい隙間がなくて、まあ面白かったんですけども・・・。

自由席だったので早めに行って1番前の席に座ったのですが、私より早く来ている人もいました。気合が入ってるなあ、と思ったらその人が最前列で爆睡していてビックリでした。最前列で、すぐそばを歌手が何度も通るのに足を組んでいて居眠りしていて、どんだけずうずうしいジジイなのかと心底驚きました。

今回の公開稽古では、3人の演出家が同じ場面を演出するところを見比べられるようになっており、別の日に岩田達宗さん、菅尾友さんの稽古もあるのですが、私は田尾下さんの日しか見られません。

取り上げる10分ほどの場面では、ケルビーノは歌うところはないのですが、演技だけのためにケルビーノ役の歌手は参加しています。田尾下さんの演出では、お客様サービスということで(?)、今回特別に「恋とはどんなものかしら」の冒頭を歌う場面が付け加えられていました。

最初に1時間ほど田尾下さんが演出コンセプトを早口で喋り倒しました。ボーマルシェの原作の話が多かったですかねえ。「登場人物は何の目的でこの部屋にやって来たのか」ということを詳しく話していましたね。伯爵には「スザンナを誘惑しに来た」という明確な目的があるわけですが、他の登場人物は実際のところなぜこの部屋に来たのか、ぼんやり見ていると分からないんですよね。
と言うか私は《フィガロの結婚》をもちろん何度かは見たことがありますけれども、ストーリーの詳細は覚えていないです。例えば《椿姫》とか《ラ・ボエーム》だったら、ここでこうなって、次はこうなってと全部覚えていますけれども、《フィガロの結婚》は全然覚えていない。えー、そうだったっけ?という感じ。

「ショーシャンクの空に」という映画がありまして、刑務所の中で伯爵夫人とスザンナの「手紙の二重唱」がスピーカーから流れ、アメリカの囚人たちはイタリア語の歌詞が全く分からないけれど、何かきっと素晴らしいことを歌っているに違いない、だってこんなに美しいメロディーなのだから・・・
というシーンがあったと思います。(うろ覚え・・・)
何か、私も、モーツァルトのオペラって、歌詞の意味を全く知らなかった昔のほうが美しかったような気がするのです。

《フィガロの結婚》と言うくらいで、フィガロはタイトルロールなのだと思いますが、彼が歌う一番有名なアリア「もう飛ぶまいぞ、この蝶々」、この歌詞の意味の分からなさと言ったらない。どういうところが面白いのでしょうか?何かこう、ヨーロッパ人でなければ読み解けない裏の事情みたいなものが隠されているのではないかと不思議に思う。それはちょうど、能の謡が日本人にしか理解できないみたいに。伯爵の「賭けに勝っただと?」も全く意味が分からない。翻訳を読めば言葉は分かるけれど歌う意味が分からない。

それで田尾下さんの演出ですけれども、演出と言うよりも踊りの振付みたいな感じでした。歌の、あるいは伴奏(今回はピアノ)の、「このタイミングで、この動きをしてください」という感じで、まさに振付です。「ここで、あなたの右手で彼の右手を掴んでください」「ここでテーブルの上に座って時計回りにくるっと回ってください」というような。
最初の1時間の喋りを除くと4時間、10分程度の場面を4時間で演出して、最後に通してやったのですが、ちょっと時間が足りないようでした。振りが多くて歌手が覚えきれないのでした。もっと時間がほしいと言っていました。

一応、歌っている人が能動的に動く、歌っていない人はそれを受ける、という構成になっていたそうです。歌っていない人もかなり動き回っていましたが・・・。早すぎて見ているほうも分からないのではないかと思う場面もありました。(ケルビーノがスザンナのうしろからバジリオの手を指さして伯爵に教えるところ、と書いても読んでる人には分からないでしょう、歌詞にもト書きにもない動きなので)

伯爵を歌った黒田さんは、「20年前の歌手だったら、こんなに動けなかっただろうし、やれと言ってもやらなかっただろう」とコメントしていました。スザンナを歌った腰越さんは、「最近は予算がなくて、これだけ細かい稽古はやりたくてもなかなか出来ない、稽古場が借りられなくて」と言っていました。バジリオを歌った大槻さんは、「過去の田尾下さんの演出では、もっと細かい時もあったから、今日は少ないほうでした」と言っていました。ケルビーノを歌った青木さんは、「私は田尾下さんに踊り要員と思われているみたいで、たいてい踊らさせられます」と言っていました。
田尾下さんは、モーツァルトの音楽を全て生かそうと思うと動きを詰め込みたくなる、もったいないと思ってしまう、時代とともにだんだん歌手の動きが多くなってきていて、自分の演出は最も動きが多いほうだというようなことを言っていました。

オペラ公演も全般的に予算が減ってきて、稽古時間が短くなり、それで田尾下さん演出のオペラを見る機会が少ないのかなあ、などと思いました。

とにかく「こんなに短い場面を準備するのにこんなに時間がかかるのか!」ということに驚きました。私が想像していたような作業と全然違っていました。

2018年8月30日 (木)

オペラの映像

私がオペラに興味を持ったのは、平成9年(1997)のことでした。新国立劇場が開場した年です。意識的にオペラに接してみようと心がけていたのですが、先に歌舞伎にハマっていてそちらのほうが優先でしたし、落語は格段に安価で確実に楽しめることがすでに分かっている。オペラなんて面白いのかどうかも分からないような舞台に何千円も払うことには躊躇いがありました、ええ。
そこで重要となってくるのが「オペラの映像」です。当時は、ビデオカセット(VHS)、レーザーディスク(LD)、DVDの3つが同時に各家庭で使われており、LDからVHSへはダビングも可能、という状態でした。オペラの映像もこの3つが同時に売られていて、VHSは新譜も出るバリバリの現役、DVDは世間に浸透し始めた走りの時期でした。
そうして《蝶々夫人》が見たい場合はカラヤン指揮フレーニ&ドミンゴ、
《リゴレット》が見たい場合はパヴァロッティ&グルベローヴァ、
《トゥーランドット》ならゼッフィレッリ演出マルトン&ドミンゴ、
《フィガロの結婚》ならフレーニ&プライ、
というように、各演目に絶対に見ておくべき定番が1つあり(全員・必ず見ていた)、
《椿姫》《カルメン》《ラ・ボエーム》《トスカ》のような超人気演目には定番のほかに「次に見るならこれ」というセカンドチョイスがあり、
「最近ゲオルギューという新星が現れたんだってさ」というような最新の話題作があった。
新しいオペラ映像が発売されることは1つの事件なのであった。
そして「今度、この演目が見たいんだけれど」とお願いするとその映像を貸してくれるオペラの先達が周りにいたり、
オペラ映像はたいてい1本3000円だったから絶対に欲しい映像は貧乏ながらも自分で購入したり、
というような感じでした。
つまり、それほどお金をかけなくても、有名な演目を一通り見ることができたのです。
そして私はマリア・カラスのファンでしたから、カラスのCD何十枚セットというのを購入し、それには珍しい演目も含まれていましたが、珍しい演目というのは少しずつ段階を経て時間をかけて全貌が判明していき、その過程もまた楽しく味わい深い経験でありました。

ところが今、皆さまご存じのように、そういった環境は激変しています。
インターネットでいくらでもオペラの映像を見られるようになってはいますが、それらにはたいてい日本語字幕が付いていない。何度も見た演目ならば字幕がなくても見るけれど、初めて見る人は日本語字幕がない映像は見ないでしょう絶対に。
そしてDVDは昔よりもたくさん販売されていて、同じ演目で何種類も手に入りますけれども、意外と日本語字幕が付いていないんですね。さらに値段が驚くほど高価になっていて、日本語字幕付きのものは1本6000円くらいだったりします。定番だったはずの映像が手に入らなくなっているケースもあります。
このような環境では、日本人の新しいオペラファンはなかなか出てこないのではないかと危惧するわけなのです。

先日、新国立劇場で《トスカ》が上演されました。その舞台を見た職場の若い者に、マリア・カラスの《トスカ》第2幕の映像を貸してあげたのです。私が持っていたそのDVDには日本語字幕が付いていなかったのですが、舞台で《トスカ》を見たばかりだから、まあ分かるだろうと思って、むりやり「見て見てお願い」と私が押し付けたわけなのですが、その若い者は「ああ英語字幕が付いてるなら大丈夫です」と言ってのけた。
これから先は、ハイパーな若者が日本でオペラを楽しむ時代なのかもしれない・・・。

2018年8月22日 (水)

指揮の好み

マリア・カラスが歌う《トスカ》のスタジオ録音には2種類ありまして、ヴィクトル・デ・サバタ指揮の旧盤(1953年モノラル)と、ジョルジュ・プレートル指揮の新盤(1964年ステレオ)がございます。
カラスが2種類のスタジオ録音を残している場合、総じて「旧盤=録音状態は悪いが声に威力がある」「新盤=声の勢いは減じているが表現力が増している」という印象があります。
そしてカラスの《トスカ》を新旧聞き比べた場合、私は圧倒的に新盤が好きなのです。カラスの歌唱もオケの演奏も、非常に演劇的な感じがします。
ところが一般には、カラスの《トスカ》を紹介する時、旧盤が推されることが多い。サバタの指揮はテンポが速く勢いがあってメリハリが効いていると思いますが、プレートルのほうが圧倒的に私の好みです。
それは、正しいとか間違っているとかいうことではなく、好みと言うよりほかありません。

私はオペラを見ていて指揮者に感銘を受けることはあまりないのですが、現役の指揮者では、ネッロ・サンティとヴィート・クレメンテが好きです。今年の12月に埼玉でヴィート・クレメンテが《トスカ》を振るので非常に楽しみです。

オペラの録音で「指揮者がすごい」と感じるのは、
1955年3月レナード・バーンスタイン指揮《夢遊病の女》スカラ座
1955年5月カルロ・マリア・ジュリーニ指揮《椿姫》スカラ座
1955年9月ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮《ルチア》ベルリン
上記3点はいずれもマリア・カラス主演のものですが、カラスの歌唱だけでなく、オーケストラの演奏も本当に神がかっていて、天才的な指揮だと思うのです。
カラス本人が最も評価していた指揮者は、師でもあるトゥリオ・セラフィンだそうですが、なぜか私はセラフィンの良さが分かりません。(残念)

カラスの録音以外では、
1966年11月カルロ・マリア・ジュリーニ指揮《リゴレット》フィレンツェ
この指揮は本当に素晴らしいと思う。リゴレットとジルダの二重唱など、もう、あり得ないくらい素晴らしい。(しかし、1966年11月ジュリーニ指揮の《リゴレット》は2種類あって、片方には感動しませんでした)

あとは、カラヤン指揮、フレーニ&パヴァロッティの《ラ・ボエーム》《蝶々夫人》スタジオ録音は、非の打ち所がない完璧な指揮という気がする。スタジオ録音の甲斐があったと言うか。

サバタなのかサバータなのかサーバタなのかは、いまだに分からない。オペラの謎の1つ。

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