横から鵺
※このブログは常時ネタバレ注意です。
昨年ニューヨークに行った際に、ブロードウェイミュージカル「スパイダーマン」を見たのです。ブロードウェイ史上最高額の製作費をかけたプロダクションだそうで、歌、踊り、ストーリーはそれほど印象的なものではなかったのですが、最後の高層ビルの舞台セットがすごかった。幕を閉めずに、客の目の前で、高層ビルがシャキーンと組みあがるんです。そのビルが、「舞台に垂直」ではなく、「舞台と水平」に立っている。舞台の手前側(客席に近いほう)がビルの屋上で、舞台の奥が地面になっている。つまり観客は、高層ビルを上から見下ろしているような視点になります。スピード感のあるワイヤーアクションが売り物で、スパイダーマンが客席上空をヒュンヒュン飛び回っていました。
最後に悪役が倒されて、高層ビルを真っ逆さまに落ちていくのですが、舞台の手前から奥へスーッと引きずられていく。面白い発想だなあと思いました。
その後、能の「鵺〔ぬえ〕」という曲を拝見したのですけれども、弓矢で射落とされた鵺(怪鳥)が落下する場面で、スパイダーマンの悪役と同じように舞台手前から奥へ向かって落下していって、あらら、日本でとっくにやっていることだったのねと感心しました。
事前に詞章を読んでいるときには、「鵺が落ちてくる」ものだと思っていたので、「鵺が落ちていく」という舞はちょっと衝撃的でしたね。
私はお能を見るとき大抵、正面席で見るのですが、脇正面から「鵺」を見たらどう見えるのか、というのを今度確かめたい。
「脇正面で見たらどう見えるか」ということが、確かめなくても分かるようになったら、それは「離見の見」というものかもしれない(?)
ついでに「殺生石」も脇正面からどう見えるのか確かめたい曲目です。
平成中村座の桜席に1度だけ座ったことがあります。舞台を真横から見る席。(能舞台を脇正面から見るような感じ?)
何度も見ている演目なのに、人物の立ち位置を平面的にしか覚えていなかったんだなあとショックを受けました。歌舞伎の舞台って、偉い人物が上手にいて、家臣が下手にいて、というように、横の位置関係は分かるのですが、縦の位置関係は身分で決まるんじゃないんですね。何で決まるのだろう。
平成中村座の桜席・・・、また座ることがあるのかなあ?
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